パン屋さんにプラスな情報が届きました。

◎ハンナ さんよりパン屋さんにプラスな情報(vol.116)

ケーキ屋の友人のお店に遊びに行ってきました。
厨房の奥で、皿に盛られたケーキを無心にスケッチしている女の子がいます。
「何やってんの、あの子?」
「入社希望者の面接。」
「面接はいつもこうなの?」
「ああ。菓子の仕事ってさ、一定の味、見た目の一定のレベルの仕上がりまでは修行して身に付くんだ。でも、その先は本人の持つセンスや感覚が問われてくる。
こと、それに関しては、あとから簡単に覚えられるモノではないから、それで行き詰まると辛い。絶望しちゃうくらいな。だから、最初からそういうセンスを持ってるヤツに菓子の仕事を教えた方が確実にいい職人が育つわけさ。で、うちではね、どんなになりたいヤツがきても、絵心のあるヤツか、かっこいいヤツしか採らない。かっこいいヤツってのは、自分の見てくれをトータルでコーディネートできるってことさ。最も魅力的に見せるプロデュースをするセンスを持ってるって判断していいと思ってる。」
「ふうん。そっかあ。なるほどなぁ。」
「ところで、パン屋 の面接ってどうなのよ?」
「基本的に入れる前提でする面接だからほとんど素通しかな。10人に2、3人しか仕事続かないけど。そりゃさ、おまえが言うようなセンスを持ってるパン屋もいるこたぁいて、見た目にこだわったものばかり並べたがったりもするけど、俺たちが目指すパンって『チャーリー・ワッツ』なんじゃないの、って俺は思っててさ。『キース・リチャード』や『ミック・ジャガー』じゃないの。」
「なんか、いつもおまえの話は訳わかんないけど、久しぶりに真顔でしゃべってるから、きっとそういうことなんだろな。」
「あんたたちが作るお菓子はさ、デザートの時間にはちゃんと食べる人の正面の皿に載るわけだよ。コックさんたちが作る料理もそう。パンが正面に並ぶことってないでしょ?だけど、いいパンってさ、その日の料理やワインを数段美味しく引き立てる、もっと言えば、その店の格すら数段引き立てる力を持ってると思ってんだ、俺。いつもそばにいて、変わらない安心感がパンという食べ物の本質なんでしょ、たぶん。『錦之介』も『橋蔵』もひとりじゃ輝けない。」
「だからさ、それ誰だよ?」
「『イノキ』より『フジワラ』に魅力を感じる人種が多いんだ。パン屋って、きっと。」
「・・・。」

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ベーカリー ハンナhanna@hw.tnc.ne.jp
店主 阿部成人(あべなりひと)
http://ameblo.jp/panemon/
地図URL
駿河こんがり堂本舗 http://www.kongarido.com/

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