◎ハンナ さんよりパン屋さんにプラスな情報(だって現場なんだもん⑮−ベンチタイムって?) 製パン講習会で配られるレシピ。 そのほとんどが、ベンチタイムは15〜20分。 ほんとかなあ、といつも怪訝な顔で眺めているのは私だけでしょうか? もっともパンがカマ伸びすると実証されているカマ入れ前の生地温32℃。 それに配合のバランスと使用するイースト量を考慮した上で、逆算して求められる工程、捏上温度、ホイロ温度。 その中では、これくらいの数値が、ベンチタイムとしては妥当で、きわめて理にかなったものなのでしょう。 しかし、四半世紀、現場の仕事に携わっている者として言わせてもらえば、グリッシーニなど特殊なパンをのぞいて、分割後丸められた生地が、そんなわずかな時間で、成型に適した状態に戻ることはありません。 実際、講習会の中でも、予定された時間に講師が生地に手を触れ、「もう少し待ちましょうか。」はよくあること。 最近は、時間通りにいってしまう講師がうんと増えましたが。 「もう少し待った方がいいんじゃないの?」 「そんなに待ったら、醗酵オーバーしてしまいます。」 「じゃあ、捏上温度を1℃下げればいいじゃない。そうすればちゃんと美味しいよ。」 「その分時間がかかって生産性が落ちるので、正しい事だとはお勧めできません。」 「でもパンは美味しいよ。」 彼は知らない。ベンチタイムの重要さを。 カマ入れ前の生地温を無理やり32℃にすることより、生地にとって必要なだけのベンチタイムをきちんと取ってやることの方が、どんなに美しくボリュームのあるカマ伸びを生むかということを。 パン作りの工程の中では、ともすると最も軽く思われがちなベンチタイムですが、風味を生む一時醗酵と同じくらい重要だと確信しています。 カマ伸びしないパンでお悩みのあなたは是非一度、捏上温度を下げてベンチタイムをしっかり取ってみてください。 成型を始めてもいいタイミングがわかりませんか?簡単です。あなたがいちばん成型しやすい状態です。 見違えるほど美味しいパンになりますよ、きっと。その上ふたまわりもフワフワに大きくなって。 ベーカリー ハンナ 阿部成人(Narihito Abe) hanna@hw.tnc.ne.jp |