◎ハンナ さんよりパン屋さんにプラスな情報(だって現場なんだもん23) 先日、うちの店を訪ねてくれたパン職人のMさん。 某大手ベーカリーに10年勤めて独立したものの、2年もたずにこの春お店をたたんで古巣に戻ったとのこと。 「自分の作るパンは、あんなに売れたのに、自分の店では売れませんでした。でももう一度やり直してまた店を持ちたいと思っています。何かアドバイスがあればお願いします。」 あなたが作ったパンだから売れていたわけではなくて、そのお店のパンだから売れていたのだというところから、また始めることです。 同じような勘違いを抱えたままの職人もたくさん知っています。こんな有名な店に、自分は10年、15年いますと言いながら、その仕事の質はせいぜい2年生、3年生程度。だからといって、大きな店で仕事をすることがよくないといっているわけではありません。なにより、そんなにたくさんのパンに接することのできる環境は、なかなか望めるものではないからです。取り組み方次第で、とてもたくさんのことを、限られた時間の中で身につけられる場だということです。 今まさにあなたが触れようとしている目の前のパンは、あなたにとって一日の仕事の中の何百分の一に過ぎないのかもしれません。 でも、ちょっと待って下さい。 そのパンを買い求めて味わうお客さんにとっては、その店やあなたの仕事の印象を決めてしまうすべてなのですよ。1/1なのですよ。 そういう意識を常に持って日々の仕事に戻ると、自分の仕事の雑なところ、わかってないまま済ませてしまったこと、自信のない仕事、たった一日の仕事の中で200や300、すぐに見つかります。ひとつずつ片づけていくだけでも5年ぐらいはあっという間でしょう。大変だけど、ワクワクする、経験したことのない充実した日々になりますよ。 そういう濃い時間を過ごしたあとなら、きっといいお店が持てそうでしょ? ベーカリー ハンナ 阿部成人(Narihito Abe) hanna@hw.tnc.ne.jp |