◎ハンナ さんよりパン屋さんにプラスな情報⑥ クロワッサンやデニッシュの折り込み作業。仕事の出来にずいぶん個人差があります。『とっておきの技を初公開』の巻です。 当時かけだしだった私も、みなさんと同じように、その手順や要領を先輩から教わりました。 「生地は冷凍庫と冷蔵庫を使ってこれくらいの硬さ。バターはこれくらいの硬さで始めなさい。」 「これくらい」ってとてもアバウトですよね。 教わる先輩ごとに微妙に硬さが違う。当然、できあがった品物も、横に伸びるもの、上にボリュームがでるもの、さまざまです。とにかく見よう見マネでやるしかない。なかなか硬さが合わせられなくて、生地の中でバターが割れたり、生地からバターが飛び出たり、みんな二度や三度は経験するあの状態です。 で、温度を計って、データを残しながらいい状態を覚えよう、と丸二年計り続けました。 結果、 ①生地は中心温度が4℃。 ②バターの中心温度は、夏14℃、冬17℃。ほぼこれでいけると確信した頃には、もう計らなくてもよくなっていましたが。 その後、新しく始める後輩たちには、「この温度で始めなさい。そうすれば早く身に付く。」と教えるようになりました。が、しかし、ちゃんと計り続けたヤツは皆無。「これくらい」と大差ないのでした。 さて、ここからが今日の目玉。 pv=nRTたしか高校の理科で習いましたね。物質は圧力をかければ温度が上がります。なにも硬さが戻るまで待つ必要はない。今ウチの店では、温度を計ることもなければ、「これくらい」で始めることもありません。 冷蔵庫の温度設定を5℃にして、 ①冷蔵庫から出したシートバターはパイローラーで7㎜まで延ばせばすぐに折り込みを始められる。 ②対粉で15%量の老麺(フランスパン)を加えて仕込んだ生地を、冷蔵庫で15時間以上醗酵させれば、いつでもすぐに折り込みを始められる。 つまり、出勤時間から逆算して仕込んでおけば、仕事のわずかな合間に、冷蔵庫からバターを出して10秒後には折り込み始められるということです。 どちらも硬さが安定しているので作業性はすこぶる良いし、低温長時間醗酵の効果で、きわめて味、風味の優れた製品になります。生地の見極めに経験や勘を必要としないので、素人のパートやアルバイトを専従にすることも可能になります。 誰にでもすぐできて、どこよりも美味しいクロワサン作ってみませんか?いちど試す価値はあると思います。細かい部分はかなり端折りました。なんでもお問い合わせください。 ベーカリー ハンナ 阿部成人(Narihito Abe) hanna@hw.tnc.ne.jp |