◎ハンナ さんよりパン屋さんにプラスな情報(vol.62) パン屋になって4年目のある日。 一番の幼なじみと、夜、飲みに出かけたその帰り道。馴染みのラーメン屋で、いつものようにくだらない話をしながら、いつものラーメンを食べるいつもの景色。 そう、ふと気付いた変わらない景色の理由は、カウンター越しに店主を挟んだ奥の壁に置かれたピカピカの冷蔵庫の扉。 「もう何年も通ってるのに、そういえばいつもピカピカだよな。手のあとひとつ付いてないし。きっと中もきれいなんだろなあ。」 急に、みるみる酔いが醒めていくのを感じました。 「俺、この親父に負けてる。おんなじ食べ物商売してて。」 一通りの仕事を形だけはこなせるようになって、すっかり一人前のつもりで、店ぐらいいつでも始められると天狗になり始めていた僕は、「たかが酔っぱらい相手のラーメン屋。」 と、バカにして見下していたにちがいない。そんな思い上がりを、脳天からぶん殴られた気分で、黙って帰りました。 それ以来、厨房のステンレス製の扉の無機質な輝きは、仕事に向かう自分の姿勢のような気がして、どんなに疲れていても気になります。 --------------------------------------- ベーカリー ハンナhanna@hw.tnc.ne.jp 店主 阿部成人(あべなりひと) http://sundance-dad.cocolog-wbs.com/ |