◎ハンナ さんよりパン屋さんにプラスな情報(だって現場なんだもの⑧)−原価率と価格設定の話。 独立して間もない後輩から電話がありました。 「あんパンが思うように売れなくて。」 「今さらあんパンでもないでしょ。」 「そう言わずに。」 「で、どんなあんパンなの?」 「原価10円の生地に、500円/㎏のあんこが50g、しめて35円の原価、売値は100円です。味はちょっとないというほど美味しい自信があります。でも一日に10個しか売れなくて。」 「そんなに自信があるなら、ほっといても売れるようになるはずだから3年辛抱すればいいよ。」 「そんなには待てないです。」 「じゃあさ、あんこをあと40g、20円分増量して120円で売ってみる?あんこがたくさん入った美味しいあんパン、話題になる可能性を付加できるでしょ?うまく火がつけば取材とかだって入るかもしれないよ。今のままじゃ、1年後に50個も100個も売れる可能性はたぶんゼロだけど、これならゼロじゃないよ。どう?」 「55円も原価をかけると、ウチの原価率じゃ160円売りぐらいになって、とても売れません。」 「120円でいいじゃない。」 「でもウチの原価率じゃ、、。」 「いまのあんパン65円の粗利でOKなわけでしょ?あんこ増やしたぐらいでなんで105円も粗利欲しがるの?ムシがよすぎない?手間なんか変わらないのに。」 「でもウチの原価率じゃ、、。」 「誰が決めたの?」 「俺です。」 「ならいいよ。」 「よくないです。」 「そんなこと教えたっけ?」 「いいえ。パン屋の経営を自分で勉強しました。」 「ふうん。」 商品の原価を把握することは大切だと思います。 原価率だって低いにこしたことはない。そのほうが儲けが多いことぐらい、そんな単純な引き算なら小学生にだってできる。 今日の提案です。 「原価率」という言葉を忘れてみませんか? 価格設定をするのに「原価率」にしばられて高い値をつけ、売れる可能性をなくしてしまってはいませんか? 「原価率」にしばられて、使ってみたい材料を使えなくしていませんか? その結果、メリハリのないとてもつまらない商品構成の売場になっていませんか? I半島で一番のパン屋の会長さんがいみじくもおっしゃいました。 「お恥ずかしい話ですが、私は50年このかた原価計算というものをしたことがない。」 ベーカリー ハンナ 阿部成人(Narihito Abe) hanna@hw.tnc.ne.jp |