◎ハンナ さんよりパン屋さんにプラスな情報(だって現場なんだもの⑩−生地にも向きがある①) 「同じフランスパンの生地を、自分1人で同じように成型し、同じようにクープを入れているのに、パンごとにクープの開き具合に差が出来ます。カマの熱ムラもしくはスチームのムラなんでしょうか?」という質問を受け、さっそくパンを見せてもらいました。 とてもいい仕事がしてある、好感の持てる良いパンでした。 しかし、結論から言ってしまうと、ことクープの不揃いはカマのせいではなく、彼の仕事によるもの。 さてここで、これをお読みのあなたに問題です。 今まさにあなたはフランスパンのカマ入れをしようと、利き腕にクープナイフを持って、きれいに並んだバタールに正対しています。 いつものようにきれいにそろったクープが3本入りました。 ちょっと待って。 今、あなたがクープを入れたバタール。もしスリップピールの反対側からクープを入れていたら開き具合に違いがあるのでしょうか? もしそうなら、なぜでしょうか? 答:想像する以上に違いがあります。 細長く成型されるパンのほとんどが、ロール状に巻かれて延ばされます。その断面は渦巻き。 渦巻きの外周の途中にクープの切れ目が入ります。切れ目から巻尻までの生地と、切れ目から中心まで続く生地が、両側に引っ張って開くとすれば、その生地量の差、力の差は歴然です。比べてみて下さい。 ①ロールの向きをそろえて、スリップピールにパンを並べること。 ②どちら側を開かせるのか確かめてからクープを入れること。 それだけであなたのパンは明日から変わります。 ベーカリー ハンナ 阿部成人(Narihito Abe) hanna@hw.tnc.ne.jp |