◎ハンナ さんよりパン屋さんにプラスな情報(vol.94) 神戸で仕事をしていたことがあります。 早朝、熱を逃がすために半分開けてあるシャッターをくぐって、「まだ早くて申し訳ないけど、焼けたパンを分けてくれない?」そういうお客様がほかの土地にもいないわけではありません。 ただ、あきらかに違うのは、その客層です。 野良着姿で、これから畑に向かう、60代の女性が、「パリジャン2本。」休日には狩猟に出かける50代の男性が毎週、「パリジャン1本。」犬の散歩で店の前を通りかかる70代の男性が毎朝、「バゲットとフルートを1本ずつ。」お母さんのお使いで、月曜と木曜に駆けてくる小学生の女の子、「山食2本。」パン食文化の歴史を感じさせる、ごく自然な風景にただただ驚くばかりでした。日本にもこんな場所があったのですよ。 そんな舌の肥えた消費者に支持されて長く商うパン屋さんは、みんな個性や力をきちんと備えていて、巡り歩くだけで、とても楽しい時間が過ごせました。 私の店を受け入れてくれた、ここ静岡にも、そんな食文化が少しずつ根付けばうれしいな。 その礎(いしずえ)になれれば、パン職人として本望だな。このごろ、そんなことを思うようになりました。 毎日、私のパンを愛してくれるお客様たちは、30年後、きっと、そんな暮らしを楽しめているにちがいないもの。「胡桃パン、焼きたてでーす!!」 --------------------------------------- ベーカリー ハンナhanna@hw.tnc.ne.jp 店主 阿部成人(あべなりひと) http://sundance-dad.cocolog-wbs.com/ オンラインショップ 駿河こんがり堂本舗 http://www.kongarido.com/ |