「ニップン・WELCOME」2003 SPRING Vol.11に掲載されました。

自転車で行けるところに私好みの新しいパン屋さんができた。オープンしたのは昨年11月18日。
ケーキ屋さんとして百貨店から頻繁に出店依頼があるL店のパン部門として、ケーキ屋さんの真向かいに開店した。オープンのきっかけはその土地がたまたま空いたからだったそうだ。はじめは別形態のお菓子屋さんの展開も考えたそうだが、結局のところパン屋さんをはじめるということで話がまとまったという。

オープンする日を待ちわびていたのにはいくつか理由があったのだが、一番は何といってもL店のケーキが好きだったことだ。その昔(といってもケーキ屋さんがオープンしてから5年位しか経っていない)自転車を走らせているときに偶然見つけたL店。ケーキもおいしかったのだが、お店のコンセプトが書かれたパンフレットやチラシ、ロゴマークがシンプルで可愛らしくて気に入り、大切にとっておいた。何度か通っているにも関わらず、お店へ行くたびについまたショップカードやチラシを手に取って、そのままもらって来てしまう。ひと通り目を通したら、好きそうな友達にあげるというパターンだ。あまりにも素敵なので、捨てちゃうなんて私にはできない。
L店は雑誌でも見かけるようになり、ここ1年位は百貨店の催示コーナーにもときどき出店するようになった。

さて、知り合いのパン職人さんからL店のパン屋さん「ブーランジュリーL」開店の話を聞いたのは、オープンの1ヵ月前。「安全・安心」を念頭に材料には徹底的にこだわり、できるだけ自然の食材を活かしたお菓子づくりをめざしているというケーキ屋さんL店同様、パン屋さんのほうもできるだけ素材にこだわったパンづくりをするということだった。

生まれつきバリバリ健康体で大きな病気もしたことがない私は、安全、安心、無農薬、無添加云々という言葉にあまり関心がない。今の世の中それらを重要視する人が多いのは当たり前だし、私もしなければいけないのかもしれないが、どうもその手の言葉を突き付けられると退いてしまう。良くも悪くも単純に「うまいが一番1」なのが私。食べておいしくて、その理由の一つが素材の良さだったというなら納得できるが、頭でものを食べる気はない。L店のケーキもおいしかったから気に入ったし、おいしかったからパンフレットもじっくり読んで友達に配った。いくらいい素材を使っても、それを生かせる技術がなければおいしいものはできないからね。うん。素材に対するこだわりを引き継いでオープンするパン屋さんだったが、パン職人さんの「もちろんこだわりますけど、味重視で」という言葉にホッとし、ますます期待はふくらんだ。

オープン時のドタバタが収まった頃訪れて改たブーランジュリーL。開店して間もないせいか試食がいっぱいあり、わかりやすい説明が入ったプライスカードを見ながらパクパク食べてしまった。もぐもぐやりながら、その昧わいの理由がカードの説明からわかるっていうのがうれしかった。一人で「ふ〜ん」とうなずきながら片っ端から試食をした。もともと、ケーキ屋さんを始める前はお菓子などのパッケージデザインなどを手掛けていた会社だったせいか、店の雰囲気にぴったりの実に魅力的なプライスカードなのだ。ちょっと食べて砂たいじゃない、という気にさせる。パンもこまめに出しているらしく、乾燥していなくていい状態。思わず “おかわり” してしまったものもある。

入り口には店のコンセプトが書かれたパネルが飾られている。それを読むと一つ一つのパンの味わいがますます感慨深いものになる。ケーキ屋さんのほうみたいにパン屋さんにもパンフレットがあればいいのに、とショップカードをいっぱいもらって来た。

文:パンの会 渡邉 政子

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