〜 Panaderia vol.15 掲載記事より 〜

究極のクロワッサン 〜パンステージ プロローグ 山本敬三さん〜
「床が汚れるから家で食べない」っていうくらい、ウチのクロワッサンは生地がボロボロで落ちます。フランスで修業していた時代に作っていたクロワッサンがそういうタイプで、僕も同じものを作りたいと思っていました。食べるとわかると思いますが、ウチのは生地がまた固いんです。もともと生地に水分が少ないのですが、そのため生地作りから焼き上がるまで丸3日、それぞれの段階で冷凍を繰り返し、生地を休ませます。でないと生地が暴れてしまってどうしようもないくらい。効率は悪いですけど、これが僕の目指すクロワッサンには必要なんです。

バターは明治の発酵バター、火を通すとその香りが特に際立ちますね。それを材料に対して50%使っています。まぁ、材料などに関しては“贅沢な材料をふんだんに”ではなく、作りたいパンに対して“もっとも適した材料と量”を選んでいます。結果的に高価な材料を使わざることを得ないこともありますが、それがウリではないんです。

クロワッサンってどこでもあるパンですからね、そういうベーシックなものこそが特にお客様からの評価の対象になると思うんです。基本は“自分で食べて美味しいもの”なんです。そうですね、自慢じゃありませんが僕は自分のクロワッサンを食べて毎日「美味しい!」って思ってますよ(笑)。

パナデリアが選んだ 美味しいクロワッサン35店
ペック 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2新宿高島屋BlF 03_5361_1111
ブランジェ浅野屋 東京都新宿区四谷4_4_12 03_3359_0751
シェカザマ 東京都千代田区一番町1 03_3263_2426
ラブランジェリーピュール 東京都目黒区五本木3-25-1 03_3715_7150
ル・ボ・パン 神奈川県横浜市中区港町11番横浜ワールドポーターズ 045_222_2107
トントン・ビゴ 神奈川県横浜市港南区港南台3-1-3高島屋1F 045_832_7803
ホテル西洋銀座 東京都中央区銀座1-11-2ホテル西洋銀座BlF 03_3535_1111
パティスリーデフェール 神奈川県横浜市青葉区美しが丘1-5-3 045_901_3911
パンエ房パンジャミン 埼玉県さいたま市文藏2-29_19 048_836_2577
L'airbon(レフボン) 東京都世田谷区池尻4-29-16 03_3712_7448
ベッカー 東京都新宿区牛込北町21 03_3268_2818
ブーランジェリールボワ 東京都中野区弥生町2-52-4 03_3229_8015
エリック・カイザー 東京都港区高輪1-4_21 03_5420_9683
富夢富夢 東京都墨田区東向島5-3-7 03_3610_1651
ヴォルテール・ピープルズ 東京都世田谷区奥沢7-53_2 03_5707_8559
d'une rerete(デュヌ・ラルテ) 東京都港区南青山6_13_9 03_54"_2604
石窯パンエ房グーテ・ルブレ 東京都台東区入谷1-18-7 03_3871_8585
ブーランジェリーブルディガラ 東京都渋谷区代官山町17-6代官山アドレス1F 03_5459_0878
ラ・メゾンド・アンジェリーナ 東京都練馬区豊玉北1-3-24ソレイユ江古田1F 03_5984_4300
パティスリーペルティエ 東京都港区赤坂3-1-6ベルビー赤坂1F 03_3588_5023
ベーカリー・グッドモーニング 東京都杉並区阿佐ヶ谷南1-14-13 03_5305_0886
ブーランジェリートースト 東京都豊島区巣鴨1-19_10 03_3943_2345
ブルトン 東京都渋谷区千駄ヶ谷2_33_8 03_5775_3453
PAUL(ポール) 東京都千代田区丸の内1-11-1F 03_5208_8418
パン・ド・コナ 神奈川県横浜市青葉区みたけ台3-18 045_974_4717
パン・ア・ラ・ビエール 神奈川県茅ヶ崎市香川2292 0467_52_6144
レジオン 神奈川県横浜市都筑区中川中央1-37-23 045_910_2345
Kalaheo(カラヘオ) 神奈川県藤沢市鵠沼石上1-3-6 0466_52_3330
lBIZAパン焼き人 東京都目黒区八雲2-8-11第2益戸ビル1F 03-3718-0700
ベッカライ徳多朗 神奈川県横浜市青葉区美しが丘5-12-6 045_902_8511
パン・ステージプロローグ 神奈川県横浜市青葉区美しが丘西1-3-10 045_902_7879
パティスリークレヨン 東京都世田谷区等々力2_17_11 03_3702_3327
デイジイ 埼玉県川口市西川口2_4_22 048_256_9966
マイン・ベッカー 千葉県市川市荒川1_6_7 0473_58_3700
パナデリアタナカ 群馬県桐生市浜松町1-2_13 0277_44_5022


プロの道具 「窯」
美味しいものを生みだす、職人達のこだわりの道具をご紹介。今回は、パン屋さんの「窯」。パン職人の持つ、一番大きな「道具」です。レンガを積んだ本格的なスペイン窯を使っているパン屋さん、『IBIZAパン焼き人』の窯を徹底取材してみました。
上からのびる三つのダクトから熱が石窯に送られ炉内が温められます。石窯は温度が上がりにくいが、一度上がると冷めにくいというのが特徴。炉内は240℃に保たれパンが焼かれています。

この円盤型の天板は1枚で通常の天板6枚分の量のパンが一度に焼けます。一緒に2種類くらいのパンを焼くこともあるとのこと。

この窯は1段で円盤型の天板が入っている。その天板が回りながらパンを焼成していきます。扉の外側の右下に付いているスイッチで、その天板の回転を止めて焼成することもできます。

通常は電気が熱源ですが、ここの扉の中に薪をくべてそれを熱源としてパンを焼くこともできるのが、このイビザの石窯です。

IBIZA オーナーの安井定義さんに聞く「スペイン窯」の秘密!!
このスペイン方式の石窯を採用した理由は、パン屋激戦区のこの地域に新参者とし出店するからには、なにか新しいことをやらなくてはならないと思ったから。それで外見的にもインパクトあるこの窯を採用しました。なので正直いうと、この窯がパンを焼くのにいいと思って選んだ訳ではないのです。ビジュアル重視で、「なるようになるだろう」という気持ちではじめてしまいました。

石窯はエジプト式とかイタリア式とかありますが、それらが直火であることに対し、スペイン式は遠赤外線という特徴があります。うちの窯は重さ3トンちょっとある。設置は夜中に大型クレーンを使って、2時間くらいかかりました。窯は、中がぐるぐる回っていて、3ヶ所ある吹き出し口から、全体に均等に熱が行き渡ります。そしてパンの中から火が入り、窯のびがいい。窯の中の温度は常に240度で、ここですべのパンを焼いています。しかも、一緒にです。
一緒にとはどういうことかというと、例えば、食パンを焼いていて、その横でクロワッサンを焼く。同時に入れて、クロワッサンが焼けたらそれを取り出し、今度はあんぱんを入れる。食パンはそのままです。ときどき火通りを考え鉄板を2枚重ねるとかすることはありますが、おおむねどんなパンも240度の同じ条件で問題ありません。
こういう具合に、数種のパンを同時に焼くという窯のスケジュールを組んでいますが、1台で、一度に焼けるのはたったの天板6枚分。2段にするということもできません。ということは、いかに無駄なあき時間を作らないかが、この窯を使いこなすポイントにもなります。
そのために、成形したらすぐに焼けるパンというのが活躍する。『イビザ』というクスクスを入れたパンがありますが、これはなんと、まったく発酵させないパンです。発酵させないでパンができるなんて常識外でしょうが、この窯ならではの窯のびの良さで、それができてしまうのです。だから、窯があきそうだ、という時に急いで仕込んで焼き上げることが可能です。
こういう、窯があいたときにすぐできるパンをもう少し増やしていきたいですね。窯の癖も分かってきたので、これからますますいろいろなパンが焼けそうです。それからプリンとか、ローストチキンも時々焼いています。そもそも料理に合うパンを焼きたいと思っていたので、この窯ならではの料理がもっと増えると面白いかも。とはいえ、やはり天板6枚分ですから、パンを焼こうと思うと料理はそんなにはできない。いかに効率よく使うか、それを考えるのも楽しいですね。

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