〜パンニュースより〜

連載の題名:甲斐の国から小麦の風 −わたしたちの小麦粉闘記①−
第1回目の題名:甲斐小麦を障害者と一緒につくりたい!

甲斐小麦を知っていますか?
安全でおいしいパンづくりを目指したパン屋さんの有志が、山梨県の八ヶ岳南麓で地元農家の方と国産小麦の契約・委託栽培を行っています。
パン用小麦として評判の高い「ハルユタカ」が1997年から完全無農薬、減化学肥料で生産され始めました。
もともと北海道で生産されていたハルユタカは、山梨県の土地で栽培されているうちに、性質や風味が土地に合わせて少しずつ変化してきたそうです。それが「甲斐小麦」として販売されています。

この小麦栽培と同じ地域である山梨県長坂町に、平成15年4月開所を目指して、知的障害者通所授産施設「緑の風」の建設を現在計画中です。授産施設というのは、障害を持った人たちが職業的な自立を目指し、福祉的な援助を受けながら働くための施設です。
緑の風では、知的障害を持った人たちの仕事の一つとして、甲斐小麦の生産と製粉作業、また、それらを使ったパン・菓子の製造販売を考えています。
これらの仕事を選んだのは、知的障害を持った人たちと一緒に長坂町の豊かな自然の中で地域性を活かした仕事をしたいということと、彼らが多くの人たちと出会い、交流のネットワークを広げていくことが可能ではないかと考えたからです。
これからの福祉は、障害のある人もない人もともに同じ地域で生きる、という方向に向かっていきます。
そして障害のある人も私たちと同じように、楽しく幸せに暮らしていくことを願っています。楽しく働いて誰かの役に立っている……そんな暮らしを創っていきたいと思っています。

中山間地域では、その特色である冷涼な気候や気温の日較差が大きいことを活かして味のよい生産物を出荷する産地もあり、こうした利点を活かした特色ある農業の展開が期待されています。
このようなことから、中山間地に位置する長坂町では、大型機械による大規模生産が望めない傾斜地の休耕地で、知的障害者による集約的な小麦生産という新たな労働の場の創出ができないかと考えています。

9月1日に、横浜のパン屋さんの方々と山梨県の農家の方々との、この秋からの小麦生産の契約に同行しました。農家の方の話によると、「このあたりは気温の日較差が大きいので、昔から小麦生産に適している土地だ」ということでした。実際、パン屋さんも「年々小麦の質が向上していて、昨年度の小麦で作ったパンは風味も豊かでとてもおいしいものができた」と話していました。
今年の生産は農家の方にお願いして、生産の一部を体験させてもらえることになりました。11月の始めに種をまき、翌年の7月に刈入を行います。
現在、収穫した甲斐小麦の製粉は製粉会社に委託されています。
しかし、オストローラー社製の業務用石臼製粉機の性能がとてもいいということで、自家製粉をしようという声があがっていました。小麦の生産地に近いということと、操作がそれ程難しくないということで、「緑の風」で製粉業務の委託を受けるという話も進行しています。

現在、「緑の風」の建設予定地は林に覆われており、このような計画を予感させるものはまだ何もありません。今年の10月に山梨県に施設整備計画の企画書を提出し、翌平成14年6月に施設建設許可の内示が受けられれば、建設がその年の10月にはじまり、翌平成15年4月に施設がスタートする予定です。
私たちが製粉した甲斐小麦を皆さんにお届けできるのはまだ2年近くも先の話ですね。おいしい甲斐小麦を多くの人にお届けできることを楽しみに、そして、自分たちで生産した小麦でつくったパンを食べることを楽しみに、今、知的障害者の施設建設に向けて準備が進んでいます。

農家との契約


建設予定地付近(八ヶ岳ハウス)


建設予定地(林地部分)


小尾さんとパン屋さん


長坂町農村風景

甲斐小麦の収穫を見てきました!(2002年7月6日)

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