〜B&C 2003-7-8 パンニュースより〜

連載の題名:甲斐の国から小麦の風 −わたしたちの小麦粉闘記 最終回−
第11回目の題名:甲斐小麦、初収穫!

リポーター 社会福祉法人 緑の風
設立準備担当/ 栗原えつこ

いよいよ甲斐小麦収穫の季節が巡ってきました!
昨年の11月に甲斐小麦をまいてから9ヵ月、夏の新緑の中で際立って、甲斐小麦の黄金色の穂が畑の中に波打っていました。

私たち「緑の風」の初収穫は、7年ほどこの土地で甲斐小麦を生産している農家の方のご協力を得て行ないました。

収穫に先立って、私たちは小麦畑の中に十分すぎるほど育ってしまった雑草を一つ一つ手で取り除く作業を行ないました。「緑の風」に通っている利用者・職員で1週間かけて2反(約2,000平方后)の小麦畑の雑草を取り除きました。収穫に使用するコンバインは、小麦を刈り取りながら脱穀をし、同時に穂を10㌢程度に切断してくれますが、水分の多い青々とした雑草があると、穂を切断するときにスムーズに雑草を切断できず、機械の中で絡まってしまいます。順調に機械で小麦を刈り取っていくには、雑草を取り除くことが大事な仕事となってきます。照りつける太陽の中、そして雨に打たれながらも、肩幅くらいしかない小麦の間を、小麦を踏んだり倒したりしないように、回りの穂に気を配りながら少しずつ進んで、ていねいに雑草を取り除きました。

甲斐小麦の収穫は、お手伝いいただいた農家の方のご都合もあり、8月2日土曜日に行ないました。「緑の風」は月曜から金曜の平日に仕事を行なっているため、初収穫はみんなが活動している日からは、ずれてしまいました。けれども、どうしても甲斐小麦の収穫を見たい!という利用者2名と職員3名が有志で集まり、甲斐小麦の収穫を一緒に行なうことができました。毎日パンを作っている利用者は、小麦の収穫をとても楽しみにしていて、「この育てた小麦でおいしいパンをつくりたいね」と、暑い中一緒に小麦の収穫をしました。そして、来年は「みんなで種をまいて、みんなで育てて、みんなで一緒に 収穫をしたい」と、収穫を手伝った全員が思いました。

今年は7月の気温が上がらず、また梅雨が長引いたこともあって、小麦の実りが昨年と比べて2〜3週間遅れました。日照不足もあり、なかなか小麦の粒が充実もせずに穂が熟し、予想していたほどには収穫量があがりませんでした。作物を育てるのは、長い長い月日がかかる上に、天候に大きく左右されてしまいます。収穫期のほんの1ヵ月ほどの天候の揺れが、この数力月順調に育ってきた小麦に大きな影響を与えてしまいました。どうしようもない自然の揺らぎに切なさを感じながらも、自然に寄り添いながら一緒に生きているんだなあという実感を、同時にみんなで感じることができました。

自分たちで育てた甲斐小麦でおいしいパンをつくりたい、というはやる気持ちを抑え、現在、私たちは扱いやすい外国産の小麦を使って自分たちでできるパンの製造の技術をひとつずつ高めていっています。パンづくりを知的障害を持った人たちと一緒に作り始めて4ヵ月、町のパン屋さんのように製造量をどかっと増やしたり、新商品を次から次へと考えていったりというようなことはまだまだ難しい段階にあります。けれども、プロのパン屋さんの力を借りながら、おいしいパンを安定してつくっていくことに全力を注いでいます。毎日毎日の積み重ねの中で、知的障害をもった利用者の人たちも、一つひとつの作業のぺ一スが上がったり、成形の技術が安定してきたり、と日々向上をしています。今は食パン生地でのバリエーションしかありませんが、菓子パン生地、クロワッサン生地、などとバリエーションを増やしながら、ゆくゆくはおいしくて安定した甲斐小麦のパンをつくっていきたいとみんなで一緒に目指しています。

1年以上に渡って「甲斐の国から小麦の風」という題名で知的障害者の福祉施設の準備とスタートの様子を連載してきましたが、今回が最終回となりました。ありがとうございました。連載は今回で終了しますが、「緑の風」はまだスタートしたばかりです。1年後、2年後、どんなふうに変わっていくのか……。今後の活動は、ぜひホームページ上でご覧下さい!そして、お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください1利用者・職員一同、多くの方の訪れを心よりお待ちしています。
http://www.midorinokaze.jp

コンバインで一列ずつ刈り取る


小麦に絡みついた雑草も、丁寧に取り除く


収穫後の麦わらは、畑の隅に積み重ねる


収穫した小麦は乾燥機に入れて粒水分量を落とす


甲斐小麦の収穫を見てきました!(2002年7月6日)

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