連載の題名:甲斐の国から小麦の風 −わたしたちの小麦粉闘記⑨− 第9回目の題名:緑の風、オープン!パン工房も動きはじめました! |
リポーター |
社会福祉法人 緑の風 設立準備担当/ 栗原えつこ |
2003年4月1日、福祉施設「緑の風」はいよいよオープンしました! 「緑の風」を利用する知的障害の方々は12名、職員7名とともに元気に通い姶めています。 「緑の風」は、パンやクッキーを製造するパン部門と、パン用小麦の甲斐小麦の生産・製粉と花苗などを栽培する農園芸部門の2本立てで始まりました。 パン部門では、まずは食パンを中心にテーブルロールやあんぱんをつくり始めています。パン製造担当の職員は、パン製造に関する修業を1ヵ月ほど受けてはきましたが、新しい機械、新しい窯、そして新しい人たちと一緒にパン製造を始めたので、まだまだうまくいかないこともたくさんあります。障害のある方々と一緒にパン生地を分割するときに、80グラムがどのくらいか見当がつかずに細切れになってしまったり、その生地をまるめるときに、力の配分がうまくいかずにきちんとまとまらず、ただ触っているだけになってしまったり。そして、四角いあんぱんや中身のはみ出してしまったチーズパンが出来上がったりしてきています。そんな焼きあがったパンたちを味見すると、障害のある彼らはとても正直で、「形は失敗だけど…、味はおいしいね」などと感想が伝わってきています。 けれども、家庭用のパンであれば、そんな失敗も、自分たちで作ったおいしさも合格点ではあるかもしれませんが、地域に住む人たちに私たちのパンを買っていただこうと思うと、まだまだ販売をするには形も味も改善をしていかなければならない部分がたくさんあります。 「緑の風」は福祉施設ですが、パンを買う消費者の方々から見たら、プロのパン屋さんであろうと福祉施設であろうとパンを販売していることには変わりなく、お金を払うだけのおいしいパンをみなさんは求めてきます。そして私たちは、福祉施設で焼いているパンだから少しくらいは大目に見てほしい…などとは少しも思っていません。 知的障害のある方々が福祉施設で働いているのは、社会で働くには少しばかりのザポートが必要であるからです。けれども、働くために福祉的なサポートが必要であるということと、福祉施設の中だから働く環境や働く内容が大雑把でいいということはまったく別のことです。福祉施設ではあるけれども、社会の中で働く一員となるためには、プロと同じような仕事、プロと同じような製品を作らなければ、社会の中の消費者には彼らの働きや製品が届いていかないのです。ですから、彼らに対して福祉施設の中で福祉的なサポートをしていますが、パンを作るという仕事、販売するパンの質はプロと同じレベルのものを求めていっています。 私たち「緑の風」の中にはパンの専門家はいませんが、今まで準備を手伝ってくださった、たくさんの専門家に多くのご協力をいただいています。食パンの型にあったパン生地の量はどれくらいが適当か、ということから始まって、実際に焼きあがったパンの膨らみ具合や味を確かめていただいて、どのパン製造の工程に問題があるのかを一緒に考えていただいたり……。手取り足取りではありますが、少しずつ、一歩一歩前進していっています。 |
![]() 完成した「緑の風」です。 ![]() 初めて「まるめ」の作業をしています。 ![]() 初めてパンが焼きあがりました。 |
「緑の風」のパンはまだまだ試作段階で、販売をする状態は整っていませんが、近所の方から「4月1日からパンの販売が始まるって聞いたんだけど、売ってくれないの?」などとパンを求めにきて下さる方が現れ始めています。 多くの人が通い姶め、中で人が動き始めると、それらが磁場の中心の一角となって、たくさんの入が興味をもって訪れてくれます。これからきっと緑の風という場所は、パンを買いにきたり、散歩のコースになったり、と様々な表情をもつ場として育っていってくれると思います。一つの建物が色々な人の行動に少しずつ影響を与えているのだなと不思議でもあり、おもしろくもあります。 「緑の風」のパンはこれから改善を重ねていって、夏頃には販売をできるように準備をします。 暑くなってくるとパンの消費が落ちてくる、などの話も聞きますが、私たちみんなが自信を持って入におすすめできるパンを作っていきたいと思います。 そして、食べた入がパンと一緒に幸せをかみしめられるように・・・! |