〜B&C 2003-1-2 パンニュースより〜

連載の題名:甲斐の国から小麦の風 −わたしたちの小麦粉闘記⑦−
第7回目の題名:甲斐小麦、いよいよ生産開始!

リポーター 社会福祉法人 緑の風
設立準備担当/ 栗原えつこ

山梨県長坂町の冬が少し早めに訪れました。いよいよ甲斐小麦の生産開始です。
私たちの働く長坂町は標高1000㍍付近にあり、昼は太陽の光にあたってぽかぽかと暖かくなりますが、さすがに夜の冷え込みはきびしく、11月下旬ころから小雪がちらちらと舞い始めます。その昼夜の気温差のおかげで、色鮮やかな紅葉がいたるところで目に飛び込んできます。そんな風景をバックに、//月2日、甲斐小麦の種まきをしました。
「緑の風」は来年4月のスタートに向けて、養護学校関係者、地域の福祉関係者、そして何よりも私たちの施設の利用を考えている知的障害のある方とそのご家族に対して、11月は私たちの活動をお知らせする時期でもありました。
私たちはそのような方々にただロ頭や文章で説明するだけではなく、雰囲気も同時に伝えたいという思いから、説明会の日に甲斐小麦の種まきを一緒に行なうことにしました。
甲斐小麦の種まきは、近所の農家の方たちと甲斐小麦を以前から育てている農家の方々、そして「緑の風」の設立をサポートしてくださっている横浜の福祉施設「共働舎」を利用されている、知的障害を持った方たちとそのスタッフと一緒に、総勢20名ほどで行ないました。
甲斐小麦の種まきは、畑の端から端に渡したロープの上を歩いて足跡をつけ、その足跡の中に種をまいていく方法です。この繰り返しが延々何十回も続きます。甲斐小麦の種を一つまみつかんでまいていくのは、知的障害をもった方の中には量の加減が難しく、どうしても多くつかみすぎてしまう方もいます。けれどもそこはひと工夫。ちょうどいい量がすくえるようなスプーンを使って一歩ずつ蒔いていけば問題なし、です。さすがに農家の方は慣れた手つきで、私たちの2倍も3倍も速いスピードで種をまいていきます。やっぱりプロは違うなあ、なんて横目で見つつも、私たちはそれぞれのぺ一スで一歩一歩。すぐ近くでプロの手つきを見ながら同じ作業を行なっていくのは、しっかりとした技術を手本にできるのと種まき自体の面白さが相まって、とても楽しい作業でした。
「緑の風」の説明会に訪れた人たちは、できつつある施設の傍らでそんな甲斐小麦の種まきを見ながら話を聞き、何を感じ取ってくれたのでしょうか。地域の農家さん、障害を持った方、そしてスタッフと、たくさんの人が入り混じって一つの仕事を完成させる、そういう雰囲気が伝わったでしょうか。
甲斐小麦の種まきに限らず、福祉施設に限らず、どんな地域でも仕事でもボランティアでも、障害があるとかないとかそんな括りではなく、あらゆるところで様々な人たちが自分たちのやり方や感じ方で関わり楽しく働く、そんな世界が広がっていく社会でありたいと思います。それを凝縮させてみたのが今回の甲斐小麦の種まきでした。今回の中で、農家の方、共働舎の利用者、説明会を訪れた方、スタッフがそれぞれにいろいろな想いを抱え、感じ取っていってくれたのではないでしょうか。終わったあとはみなさんそれぞれにさわやかな笑顔があふれていました。
共働舎の利用者の入たちに後日会ったとき、「芽が出た?」「どのくらいになった?」と嬉しそうに聞いてきてくれました。作物が育っていくことの期待やたくさんの人たちと一緒に汗を流して働いたこと、そんな喜びや楽しみが彼らの中に積み重なっていっているのだなあと感じました。
まいた甲斐小麦の収穫や次回の種まき、今度はどんな人たちと一緒にやるのだろう?そんな次へと続いていく楽しみが作物を育てていくことにはありますね。皆さんも次回は一緒にやってみませんか?

11/19、待ちに待った甲斐小麦の芽が出た

緑の風の事業説明会

みんなで列になって甲斐小麦の種まき

順調に工事が進んでいる緑の風の建物


甲斐小麦の収穫を見てきました!(2002年7月6日)

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